「三宅洋平」は「惨敗」したのか - 2016参院選・やじうま的雑感



2016.7.10 参院選、改憲派が三分の二の議席数を確保しました。
日本の戦争容認国家化は雪崩を打って進んでいます。

一方、同日の鹿児島県知事選は、原発に反対の立場の三反園訓氏が当選。国レベルと地方レベルでの方向性のよじれを感じる結果です。

参院選の東京選挙区には、前回の参院選比例区に緑の党から出馬し、17万票の得票を得たミュージシャンの三宅洋平氏が立候補しました。

三宅氏は「選挙フェス」と銘打って、音楽を効果的に使うなど、若者の心を捉える選挙活動を行ない善戦しましたが、25万票の得票にとどまり、当選ラインの50万票は大きく下回りました。

ここでお断りしますが、ぼくは三宅洋平氏の主張を全面的に支持するものではありません。

彼の主張に共感する点は多いのですが、ネット上でも取り沙汰されている[*]ように、国政において国民の代理として働いてもらうには、いささか脇が甘いように思えるのです。
([*] 参照: 都議おときた駿氏のページイケダハヤト氏のページ )

けれど、上述の二氏のような形で、三宅氏の批判をするつもりはありません。三宅氏の脇の甘さは承知の上で、彼が今後も政治活動を続けるのならば、そういった点での成長を期待するものです。

そうした視点を確認していただいた上で、メディア学者の藤本貴之氏がblogosに書かれた記事を踏まえ、「三宅洋平」は「惨敗」したのか、という観点から少し書いてみようと思います。



さて、藤本氏の記事のタイトルは『<三宅洋平氏落選>実態なき支持層が産み出した「選挙フェス」という都市伝説』というものです。

この「都市伝説」ということについて、藤本氏は、
しかし、結果は、三宅氏はダークホースとして当落を争う激戦をすることもなく、普通に落選。三宅氏と彼の率いた「選挙フェス」による急激な支持拡大という情報が、単なる「都市伝説」だったことを露呈する結果となった。
と書きます。

たしかに「選挙フェスによる急激な支持拡大」がなかったことは、事実です。

けれど、重要なのは、前回の参院選比例区で17万票だった三宅氏が、今回は東京選挙区で25万票を取り、「選挙フェス」という手法の健在ぶりを示したことにあるのではないでしょうか。

また、10万票にも届かない候補が多い中で、25万票を獲得した三宅氏に対して「実態なき支持層」という言葉を使うのは、レトリックとしても拙いものと思えます。

藤本氏は「パーティピープル」の若者たちは、「選挙フェス」には参加しても投票に行かなかったかのような記述をして、そうした若者を「実体なき支持層」と呼んでいます。

しかし、当落ラインの半分とはいえ、獲得票数の25万という数字は、東京ドームを五日間満員にできるだけの数字です。

これだけの数字を、藤本氏言うところの「実体なき支持層」が投票として示したわけですから、大いに評価できることだと思います。



そして、「圧倒的な盛り上がりを見せている『選挙フェス』や三宅洋平候補のことを既存メディアは報道しない」という三宅陣営の主張に対し、上述のおときた氏は「陰謀論」といって否定的に取り上げています。

おときた氏の記事を見ると、三宅陣営自身が、メディアの「陰謀」という言い方をしているようで、確かにそれはいただけません。

しかし、藤本氏は記事の冒頭で「参院選・東京選挙区の話題の一つは「選挙フェス」と銘打った選挙運動を展開した三宅洋平氏だろう」と、その話題性について指摘しています。

とすれば、当落の可能性に関わらず、新しい選挙の形としての「選挙フェス」には、十分報道する価値があるということではないのでしょうか。



以上のように見たとき、改憲派が三分の二議席を獲得してしまい、逆に三宅洋平氏は当落ラインの半分しか得票できなかったという現実は、護憲派にとっても三宅氏陣営にとっても「惨敗」としかいいようのない結果だと思います。

けれど、ものごとをある一時点での結果だけで判断すると、長期的には誤りのもとにもなりかねません。

三宅氏が今後も国政選挙に立候補するかどうかは分かりませんが、そのこととは関わりなく、今後も彼のようなスタイルの若者があとに続くことは間違いないように思われます。

そのとき、「三宅洋平」的な方法論が健在であり、そこには多くの可能性が眠っていることを示してくれた点で、今回の参院選で、「三宅洋平」は「惨敗」したのではなく、相当程度の「勝利」をおさめたのだといって間違いないでしょう。

厳しい状況が続きますが、新しい世代の動きに期待するものです。

コメント

北野慶 さんのコメント…
私も惨敗ではなく、次回へつなぐ(次回があればの話ですが)善戦だったと思います。
那賀乃とし兵衛 さんの投稿…
北野さん、コメントありがとうございます。
「次回」というべきか分かりませんが、とても厳しい現在の状況の中で、三宅氏の善戦は、未来への希望の芽吹きと思います。

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