「天然系・総理の密使」安倍昭恵氏が沖縄高江のヘリパッド建設反対運動テントを訪問

[この記事のまとめ]
・安倍昭恵氏の高江行きは、自分が現場を見たいという、ただそれだけの理由で行われた。
・三宅洋平氏は、軽率にもそれに協力した。
・現場では一時的に多少の混乱があった。
・三宅氏は昭恵氏との関係を断ったほうがよい。
・弱者の気持ちが分からない、昭恵氏の人物について少々。

  *  *  *

2016年8月6日、安倍総理大臣夫人の安倍昭恵氏が、三宅洋平氏の案内で、沖縄・高江のヘリパッド建設反対運動のテントを訪れました。

琉球新報8月7日の記事より、昭恵氏の高江訪問について、前の記事とは別の部分を引用します。
ミュージシャンで参院選へ2回立候補した三宅洋平さんによると、今回の訪問は、昭恵さんが高江のヘリパッド問題などを描いた映画「標的の村」を鑑賞したことをきっかけに「現場を見たい」と三宅さんへ相談したことがきっかけ。三宅さんは沖縄平和運動センターの山城博治議長へは相談したが、大半の市民らには昭恵さんの訪問を知らせていなかったことから戸惑いや疑問の声も上がった。

昭恵氏は「何が起きているのか、自分の目で確かめたい」から高江に行ったのだと、8月7日Facebookに書いています。

しかし、昭恵氏は先日の参院選では自民党の島尻あい子氏の応援で沖縄入りしており、一私人として高江の問題に関心を持って訪れたという説明は、現場で反対している人々には受け入れがたいものでしょう。

昭恵氏の高江行きを仲介した三宅氏も当然のように非難されており、この昭恵氏の行動は反対運動に一時的に多少の混乱をもたらしました。

このことは安倍政権から見れば、まったく小さいお話で、毒にも薬にもならないほどのエピソードでしょう。

ですから無用に騒ぎを大きくすることは、ヘリパッド建設反対の運動に水をさす結果にしかならないので、慎んだほうがよいと思います。

また、三宅氏にぜひお伝えしたいのは、昭恵氏の「お気持ち」に付き合うのはもうこのくらいにしたほうがいいだろうということです。

昭恵氏が高江の問題を本当になんとかしようというのなら、きちんと自分の持てる力を使ってやるべきです。

仮にそのことで援助を求められても、関わりにならないほうがよいでしょう。

  *  *  *

「天然系・総理の密使」である安倍昭恵氏について、もう少し見てみます。

1962年生まれの昭恵氏は、森永製菓第5代社長の松崎昭雄氏が父親であり、聖心女子専門学校を卒業後、電通に入社、上司の紹介で安倍晋三氏と会って結婚されたのだそうです。

良家のお嬢さんが、将来有望な若き政治家と結婚して、やがて首相夫人となった、という成功物語のヒロインというわけです。

昭恵氏は、2011年度に立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究科の修士課程を修了し、修士号(比較組織ネットワーク学)取得しています。修士論文のタイトルは、「ミャンマーの寺子屋教育と社会生活 —NGOの寺子屋教育支援—」です。

大学院での経験を昭恵氏はこう述べています。(2014年の雑誌インタビューより)
考え方が違う人たちと出会ったことは大きかったですね。主人とは真逆の考えの人たちもけっこういました。たぶん大学院に行かなかったら、そういう人たちの意見を聞く機会はなかったかもしれないけど、なるほどと思うこともたくさんありました。議論することでお互いに歩み寄れる、立場や意見が違っても相容れる部分はかならずあると気づきました。

半世紀の人生の中で昭恵氏がはじめて、社会的立場による意識や意見の違いに気がついたことが見て取れます。

また、このようにも言っています。
2011年の東日本大震災。多くのかたがそういうかもしれませんが、私もこの震災を経験したことで、意識が変わりました。 私が原発再稼働反対、輸出反対などと発言していることで、つい先日も、主人を応援しているかたから、総理の足を引っ張ってはいけないというお叱りを受けました。震災前の私だったら、『はい、わかりました』とおとなしく引き下がったでしょう。でも私は、地球の環境や持続可能な社会を目指すことに重きを置きたいのです。
(以上、オクトアクティブエイジング 2014年 7/1号より)

この発言も、福島第一の事故を受けての率直な感想に思われます。

一方で、2013年の別の雑誌のインタビューでは、
――安倍総理は再登板後、ますます理念先行で好戦的でもある印象が強まっている気がするんですけれども。 
【安倍】どうなんでしょう。でもわたしを妻としているので、たぶん大丈夫だと思うんですけども(笑)。わたしが話を聞いて欲しい時はちゃんと聞いてくれるし、こういう人に会ってほしい、といえば会ってもくれます。やわらかいところはやわらかいですよ。例えば反原発の飯田哲也さんにしても、わたしは3・11後に彼の意見が素晴らしいと思ったので、議員会館に連れて行って主人に話を聞いてもらったことがありました。そうすると、なるほどね、みたいな感じで話を聞いてくれるんですよ。わたしは家庭内野党と言われてますが、別に主人と戦おうというつもりは全然なくて、主人の不利になることもするつもりはないんですよ。ただ政治家の妻はこうあるべきとか、総理の妻はこうあるべきとかいう枠の中にはめ込まれるはイヤなんです。前回はその枠内で頑張っていたんですが。でも時代が変わってきて、わたしが変ることで勇気をもらえたという女性たちもいるんですね。そこで少しずつ女性が変わっていけるのなら、自分が勇気を持って一歩踏み出す。
と言っています。
(『新潮45』の2013年9月号の『妻から見た「素顔の安倍晋三」』という安倍昭恵氏へのインタビュー記事を、[北京老学生]さんのページより孫引き)

「総理の妻はこうあるべき」という枠には入りたくないが、「総理の不利になること」をするつもりもない、というわけですから、「原発再稼働反対」とは言っても、あくまで表現の自由を「楽しまれてらっしゃる」だけで、本当に再稼働を止めようとしているわけではないようにも思えます。

今回の高江訪問についても同様で、「私が行ったからどうなるものでもない」と言いつつ、「対立、分離した世の中を愛と調和の世界にしていくための私なりの第一歩・・・」(8月7日Facebook)と書くのですから、現に生活道路を封鎖されている高江の住民の方々や、米軍基地の被害にさらされている沖縄の方々からすれば、到底容認できる発言ではないでしょう。

その発言をするご本人には「悪意」の欠片もないだろうことが却って、昭恵氏やその夫が属している「支配階級」の人々の行動によって、日々不利益を被っている沖縄の人々には不愉快に感じられるのだと思います。

そして、そうやって傷つけられた高江のテントの方々に対する謝罪の言葉は、昭恵氏の発言の中には見当たらないのです。

ご本人には反対運動を混乱させようという気持ちなど、これっぽっちもないであろう「天然」ぶりで、夫である安倍総理に対して「内助の功」を尽くすその姿は、「天然系・総理の密使」という呼び名がふさわしく思われます。

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