人生は哲学するには長すぎる 01 ぼくは万年厨ニ病

「哲学」という言葉には、ずいぶん大それた響きがありますが、英語のフィロソフィ philosophy という言葉の場合は、「人生に対する考え方」程度の軽い使い方をするのだという話を、遠い昔なにかで読んで、「へー、そうなんだ」と感心した覚えがあります。

試しに手元の辞書で引いてみると、"a set of ideas about how to do something or how to live" という記述があり、これの意味するところは「何かをなす、あるいは人生を生きるにあたって、どのような方法を取るかについてのひとまとまりの考え方」といったことですから、日本語の「哲学」よりはだいぶ軽やかな感じがします。
(なお手元の辞書というのは Merriam-Webster Dictionary の android 版で、いわゆる英英辞典というやつですが、ネット上のほかの辞書よりやや収録語句が少ないきらいはありますが、無料で、しかもオフラインで使えるので重宝しています。iphone 版もあるようです)

さて、友だちのネギさんが「人生は哲学するには短すぎる」という記事を書いていて、その中で、哲学というものは「職業哲学者ならともかく、一介の庶民が手を出すには時間がかかり過ぎる」と述べた上で「一介の庶民は何十年も先に訪れる死などというものに悩み苦しんで人生を無駄に過ごす暇はないのである」とおっしゃっているのは、けだし名言と言えましょう。

ただし、これはネギさんのような健全な精神の庶民にのみ当てはまる言葉なのでありまして、ぼくのような「不健全」な人生を送る人間においては事情はやや異なってきます。

ぼくの場合、「この世界ってのは、一体どういうシロモノなのか」とか、「どうして俺はこんな世界で、ごちゃごちゃごちゃごちゃ苦しみながら生きなきゃならんのだ」とか、「もっと楽に生きる方法があればなぁー」とか、そういう「哲学」未満のうたかたの考えの切れ端が、ことあるごとに浮かんでくるわけです。

これは直接的には、ネギさんのいう「死に悩む」ということに該当しませんが、「死とは何か」の裏返しとしての「生とは何か」に悩み続けているわけですから、実質的に同じことと言えましょう。

ところで、こうした「哲学」未満の悩みというものは、一定程度の若者にとって、ある時期に通避けては通れない、取り組まざるをえない課題になりもします。けれど若い時期にはそうした問題で思い悩んでも、ある程度の時間をそれに費やしたのちは、不完全であるにせよ自分なりの解答を出すことで、それを乗り越えて大人になっていく……。これが多数派の辿る道筋であります(ネギさんの場合は、またそれとも異なるようですが)。ところが、わたしのような「不健全」な人間は五十を過ぎてもそれを抜け出すことができないわけです。

ここで、こうした「哲学」的な悩みを卒業できない「大人」についても「中二病」の範疇に入るものとして扱っても間違いではないでしょう。(中学校も三年生にもなれば、高校受験のことなど考えて、十分な社会化をしなければならない、といった背景が想像される素敵な言葉です)

なかなか「哲学」という本題に入れませんが、万年厨ニ病のわたしにとって、「なぜ、哲学するには人生が長すぎるのか」については、次回以降で書いていきたいと思います。
(多分あと二回くらいは書くような気が)

なお、先に挙げたネギさんの言葉は次のように続きます。

哲学者はともかく、一介の庶民は何十年も先に訪れる死などというものに悩み苦しんで人生を無駄に過ごす暇はないのである。ラーメン、カレー、ビールと旨いものを飲み食いし、将来のことと言えば来期のアニメにわくわくするくらいでよいのだ。
自分の未来についてすら、それで十分であり、ましてや国や世界の未来についてどうにもならないことを心配する必要などないのである。法律守って比較的マシな候補者に投票していれば、それで十分だ。

庶民派健全哲学で素晴らしいです。

以上、ご精読ありがとうございました。

[なお、いわゆる哲学の本ではありませんが、ぼくにとっては哲学にとても近い世界が書かれているという意味で、RD レインの「レインわが半生―精神医学への道」を挙げておきます。この本はエヴァンゲリオンとの関係で最近の人にも知られるイギリスの精神科医が書いたものですが、ほかではあまり指摘されることのない、人間の生と社会の奇妙な本質について描かれた、類まれなノンフィクションだと思います]

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☆続きはこちらです。

[02 厨ニ病患者のインド万歳]

[03 「宝石泥棒」が導く遥かなるインドへの道]

[04 人生は無意味、ゆえにぼくらは自由]

[05 幸せってなんだっけ・社会神経系と瞑想の話]

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